すこし古い話ですが、「ラグタイム通信」が2020年9月1日よりほぼ月刊で発刊されました。紙媒体でラグタイム内で配布してました。現在は残念ながら休刊となっています。現在、現物(6号)がラグタイムの出入口外側に貼り出してあります。
内容はこってりと読み応えのある記事が多かったです。私の知識では読み解くのに困難なものもありました。その他4コマ漫画、「裏ラグタイム通信」があったり、純子さんの「新年特別インタビュー」があったりと盛りだくさんの内容でした。
拙者もいくつか投稿させて頂きました。その内「歌うのはヒトと鳥」が5号(2021年1月)と6号(2021年3月)に分けて掲載されました。まとめてブログにあげてみます。掲載はマスターの了解済みです。
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「歌うのはヒトと鳥」ラグタイム通信5号・6号
僕はバーダーです。バーダー(birder)とはバードウォッチングを偏愛する人のことを言います。バードウォッチャーより少し過激な人達なのです。音楽と鳥とは一見関係無さそうですが、鳥をモチーフにしたものが少なからずあります。音楽と鳥の視点で小さな話題を2、3書いてみたいと思います。
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| 写真1:Return To Foreve ジャケット |
ジャズのレコードではChick Coreaの 「Return To Foreve」のジャケット(写真1)が有名です。この滑空する格好良い鳥についての記事はほぼ有りません。この鳥が何なのか不明なのです。カモメとしているコメントもありますが、違います。私が同定します。この鳥はカツオドリ(Brown Booby)です。まぁバーダーならすぐ解るのですが...この鳥は翼開長 約130〜150cmの海鳥で獲物(魚)を見つけると羽根を折りたたみ猛スピードで海中に突入します。まるでミサイルのようです。「永遠への回帰」とどんな接点があるのでしょう。興味は尽きないです。
ジャズの演奏者でバードと言えば、チャーリー・パーカーです。ラグタイムでもレコードがかかります。愛称はyardbirdですが、縮められてbirdと呼ばれていたようです。こちらは、どうも鳥とは関係なさそうです。yardbirdの意味は割愛します。
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| 写真2:映画「A SONG IS BORN」より |
以前、ドラマーの猪俣猛氏(カーネギーホールで演奏した初めての日本人)のジャズ講座があり、映画「A SONG IS BORN 1948年米国( 邦題:ヒットパレード)」を元に話を聞きました。この「A SONG IS BORN」は興味深いものでした。この映画の一部(写真2)はJazzの始まりを再現したもので、ダニー・ケイ、ヴァージニア・メイヨ、ベニー・グッドマン 、トミー・ドーシー、ルイ・アームストロング、ライオネル・ハンプトン、チャリー・バーネット、メル・パウウェルなどそうそうたるメンバーが出演しています。「A SONG IS BORN」を皆で「朝にツグミがさえずり」「歌が生まれた」「人はツグミから旋律と歌詞を学んだ」「こうして音楽が生まれた」「ジャズの誕生を...」(いずれも字幕)と歌っています。ツグミは英語で「Mockingbird」と発音してますが、北米なのでこのツグミはNorthern Mockingbirdです。和名をマネシツグミと言い日本にいるツグミとは違います。和名のとおりいろいろな鳴き真似をする鳥で、かなりうるさいです。北米では非常にポピュラーな鳥です...鳥から学んだのですね。
余談ですが、僕は趣味で音楽ライブのPAをしており、この映画には興味をそそられる物があります。写真2左上に注目。これはレコード盤に音を直接記録する機械なのですが、1948年というと終戦間もない時代です。まだ磁気テープは普及してない頃なので、録音と言えばこのダイレクトカッティングだったようです。例の玉音放送もレコードに直接吹き込んだものをラジオ放送したものです。この映画では、録音エンジニアが居ないので演出のようです。ミキサーのような物もあり、この頃のレコーディング風景がかい間見れます。最近、アナログレコードの復権に伴いダイレクトカッティングの録音が復活しているようです。LP「PLAYBACK AT JAZZ KISSA BASIE」の「バードランド:ハイソサエティ・オーケストラ 1978」の演奏がダイレクトカッティングした録音です。ラグタイムで聞けます。
TV番組「song to soul:Lovin' you」からの引用です。歌手のミニー・リパートンと言うとあまり馴染みが無いかも知れませんが、Lovin' youは一度は耳にしたことのある曲かと思います。透明感のある美しい高域の歌声が素晴らしい曲です。録音時、イントロがなかなか決まらなく悩んでいたところ、同席していた友人のスティービー・ワンダーが最初のデモテープを聞いて。これで良いんじゃないかって…そこには窓を開け放して録音したデモテープに偶然Mockingbirdの声が入っていました。そこで皆で公園に鳥の声を録音しに行ったそうです。そして出来たのが、バックコーラスにMockingbirdのさえずりが入ったLovin' youです。レコードにはMockingbirdの名も入っています。
美しい歌声を奏でるのはヒト以外、鳥しかいません(クジラも歌うそうですが、ちょっと違うかなぁ)。鳥の歌声のさえずりを「ききなし」と称し、ヒトの言葉に置換えてます。「一筆啓上仕り候」「長兵衛、忠兵衛、長忠兵衛」「土食って虫食って渋い」「特許許可局」「お菊二十四」...などきりがありません。鳥のさえずっている頂きをsong postと言います。ヒトもステージという高い所で歌います。「歌うのはヒトと鳥」...鳥のこと少しは身近に感じて頂けたでしょうか?
文:ChitokaraOtoNakama
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